ホテルよりも快適だった夜行バス

私は旅が好きです。よくフラフラと一人旅に出るのですが、そのときによく長距離バスに乗ります。昼間のバスは景色が見られて良いものですが、多くは夜行バスを使います。

夜行バスの一番のメリットは、移動しながら眠ることができ、一石二鳥で時間の節約になることです。といっても一昔前までは夜行バスが好きだというと

「えっ、疲れるでしょ?」

と驚かれたものです。

たしかに昔の夜行バスは、狭いうえにクッションも悪く、隣の人が気になって眠るどころではありませんでした。しかし、今は違います。現在の夜行バスは新幹線よりも乗り心地がよく、ちょっとした安宿よりも快適なくらいなのです。

一番思い出深いのが、大阪から高知へ行くときに乗った夜行バスでした。座席一つ一つが分かれている3列シートで、どの席にのっても「隣の人がいない」という状態であり、ある程度プライベートが保たれていました。座席と座席の間隔もひろくて、リクライニングにしても後ろの人に迷惑がかかることはほとんどありません。

あらかじめ乗客全員にペットボトルの水が配られたほか、運転席の近くにはジュースも用意されていました。トイレは少し階段をおりた低い位置にあって目隠しされている上に、とても清潔です。空調は万全、Wi-Fiだってとんでいます(バスでWインターネットが使えるなんて時代が変わったなあ、と年配の方が驚きの声をあげていました)。

どんな夜行バスでもそうですが、乗ったときは誰も落ち着きがなくざわざわしていました。乗客が全員そろい、運転手さんが
「それでは消灯させていただきます」
といって灯りを消すと、客席は闇に沈みます。

ふかふかのクッションに身を沈め、リクライニングで足をうんと伸ばすと、良い気持ちでした。今回は本当に良いバすだ、大当たりだと思いました。旅に出た解放感からや日ごろの疲れもあって、すぐに寝入ってしまいました。

目が覚めたのは、カーテンの隙間から朝日が射しこんできたせいです。座りっぱなしで体が痛くなるどころか

「まだ起きたくない、このままずっと乗っていたい」

と思うくらい心地良かったことを覚えています。熟睡していたので「座って乗っていた」記憶がほとんどないくらいです。

高知県の中村というところで私はバスを降りました。バスを降りると空気がすがすがしく、小鳥のさえずりが聞こえてほっとしました。乗ったときには気づかなかったのですが、可愛らしくデザインされた坂本龍馬がバスのボディに描かれていて、とっさに写真を撮りました。

その夜は安ホテルのシングルルームに泊まりましたが、あまり眠れませんでした。ベッドが少し固めで合わなかったのです。私は夜行バスの上等なクッションと眠りを誘う低いエンジン音が懐かしくなりました。

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